今年の夏は急に空が暗くなったと思えば、分厚い雲からゴロゴロと音がし始めることが多かった。 雲の間から落ちる雷を見てみると、それは鋭利なギザギザではなく、へろへろとしたサツマイモの根っこのような細い線で、そういえばこんな感じだったなと再確認する。 あのへろへろは、静止画として捉えれば貧弱そうな印象を受けるが、実際は本来通過が難しい「空気」のなかを、膨大な力によって押し通ったりぶつかったりしながら形作られている。普段見ることや意識することのない「空気」が、雷によって浮かび上がり、また雷も雷らしさを形づけられている。 堀田のペインティングは、初期の頃描かれていた漫画的モチーフから現在までの変化をみると、もともとあるモチーフから要素だけを選んで抽象化していくような作業ではなく、彫刻のようにガリガリと削り去って形を残すような手法をとっているように見える。 それは自らの身体性を用いて絵を描くという自明な動作を用いることではなく、実はその身体のあり方を形成する、図と地でいうところの地である「空気」を作り出しているのではないだろうか。 今回の「からです」という展覧会タイトルは、始まりを示す「~(から)」と「空(から)っぽ」と2つの意味を読み解くことができる。 どちらもゼロの状態としての「無」を想起させる。堀田が描画の際に用いる白は、そのような「無」を象徴するような素材のように思わせる。 捉えがたい存在を得ようとする時、自分の身体をいかにコントロールできるか、それをこの空間でみせてくれるのかもしれない。
1999年 愛知県出身 現在 東京藝術大学 大学院美術研究科絵画専攻 在籍 支持体へ身体を折り畳むように、痕跡を積層させる。あるいは支持体を抜け出し、身体を伸ばすように、空間上にぎこちなく「〜のようなもの」を作る。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 個展に pppractice/ フラットリバーギャラリー,東京(2023) ない関節 / 亀戸アートセンター,東京(2023) 直近の主な展示に うららか絵画祭 / The 5th Floor,東京(2023) ハビタブルゾーンより皆様 / artgallery Opaltimes、大阪(2022) 焼きつく線 / gallery TOWED、東京(2022) など。 その他アートブック・ZINE制作なども行なっている。 ●Link website (旧website※今も見れます) Instagram